ねぇねぇ、木を削っていると、「削りやすい向き」と「削りにくい向き」があるじゃない。あれって何なの?
それは「順目」と「逆目」だね。
ならいめ…?
さかめ…?
どうも。猫の皿の太田潤(@_datsumori_)です。
この記事では、木材の加工時に気になる順目(ならいめ)と逆目(さかめ)について、その原理から解説しています。これを理解すると木材の加工が楽になるし、仕上がりも美しくなります。そして、木材についての基本的な知識を得ることにもつながります。
では、一緒に勉強していきましょう。
「順目」・「逆目」とは
木材を加工していると「加工しやすい向き」と「加工しにくい向き」があることに気づくと思います。それは木の繊維の方向によって生まれるものです。写真をご覧ください。
分かりやすいように木目をペンでなぞってみると次のようになります。
木目が弧を描きながら斜めに入っているのが分かりますね。このようになっているため木材には「加工しやすい向き」「加工しにくい向き」向きが生まれます。
①ように刃物が木の繊維に倣う(ならう)ように進んでいく向きを順目(ならいめ)と言います。
そして②のように刃物が木の繊維に食い込んでいくような向きのことを逆目(さかめ)と呼びます。
加工時の注意点、刃を入れる向き
順目は木の繊維をなでつけるような向きのことでした。刃物は木の繊維にならうように進み、材を美しく仕上げることができます。ナイフで木を削るときも、鉋で材を仕上げる時もできる限りこの向きで加工するようにしましょう。
反対に逆目は木目に刃物が食い込むような向きのことで、この向きでは木の繊維が起き上がってしまい、美しく仕上げることが難しくなってしまいます。木の繊維が起き上がり、材の表面が毛羽だってしまった状態のことを「逆目がでる」という風に言ったり、逆目がでた状態のものをどうにかしてきれいに仕上げることを「逆目をとめる」という風に言ったりします。
木材を加工するときには「木目の向き」に注意して美しく仕上げられるように気を配りましょう。
へぇ、木材には「向き」があるのね。
でも、どうしてそんな風になるのかしら?
そうだね。それじゃあ、
これから木材に順目と逆目ができる仕組みを見ていこうか。
木の成長(生長)の仕方を知ろう!ーー木材の基本1
まず、必要な知識が「木はどのように大きくなるか?」です。下の図をご覧ください。
これは樹木の生長の仕方を模式的に表した図です。木は
①同心円状に外側へ肥大化することと
②先端方向へ伸びていくこと
によって大きくなっていきます。木の生長についての詳しい話はまた別の記事を書こうと思いますが、ここでは木の中身が図のように「タケノコみたいな形」をしているということだけ理解しておいてください。
これが「順目と逆目」をの仕組みを理解する上での基礎知識のひとつ目です。
元口・末口を知ろうーー木材の基本2
みなさんは木の「元口(もとくち)」とか「末口(すえくち)」という言葉を聞いたことがありますか?
「元口」というのは木の根っこの方の幹の直径が大きい方、
「末口」というのは木の先端の直径が細い方のことです。
「口」を省略して単に「元(もと)」「末(すえ)」と言うこともあります。
木で建物を作る時にはこの元とか末とかいうことが大事になってきます。
例えば柱は下側に元口が、上側には末口が来るように立てていきます。柱に限らず家をつくるのに使う木材は山に木が生えていた時の姿の通りに使ってあげるのが基本になります。束を立てるときにも上下を考えるし、壁の中に隠れる下地を作るときにも大工さんは材料の元末を意識しながら使っています。
元口、末口というのは日常生活の中では耳慣れない言葉ですが、木材の性質を理解するための基本的な用語ですのでよく覚えておいてください。
(元口末口についての詳しい説明はコチラ)
木表・木裏を知ろうーー木材の基本3
木材の方向をあらわす言葉として、もう一つあるのが「木表(きおもて)」と「木裏(きうら)」という言葉があります。下の図を見てください。
木表というのは木材のうちの「樹皮に近い側の面」のことを言います。
木裏というのは反対に「芯に近い側の面」のことを言います。
木表木裏というのも、大工さんが家をつくるときによく使う言葉です。それは木の反りと関係してくるからです。木表・木裏と木材の反りについてはこちらの記事をご覧ください。とりあえず、ここでは、樹皮に近い側を木表、芯の方を木裏と呼ぶことを覚えておいてください。
「元・末」「木表・木裏」と「順目・逆目」の関係
さて、ここでようやく「順目・逆目」のでき方の仕組みを説明できます。下の図をご覧ください。
先程も見た「タケノコ型」の図です。これを切り倒して製材すると下の図のようになります。
さて、ここで材をよく見てみましょう。
まず木表側について考えてみると、「末」→「元」の向きが順目ですね。反対が逆目の向きです。
次に木裏側について考えてみると、今度は「元」→「末」の向きが順目になっていることがわかるかと思います。なぜそうなるのかはもうお分かりですね。木の断面が「タケノコみたいな形」になってるからです。
このように木表木裏によって元→末が順目なのか、末→元が順目なのかが変わってきます。
だから大工さんは木材を鉋掛けするとき、木表側を仕上げる時には末口→元口、木裏側を仕上げる時には元口→末口という向きで鉋掛けをします。
まとめ
ここまで、「順目と逆目」の仕組みについて、木の成り立ちから考えてきました。
結果をまとめると、
- 「木表側では末口から元口が順目、元口から末口が逆目」
- 「木裏側では元口から末口が順目、末口から元口が逆目」
ということになります。
注意したいのは、順目や逆目の向きというのは、つねに「元→末」とか「末→元」と決まっているわけではなく、木表木裏によって決まってくるということです。
立ち木の状態をイメージして、内部がタケノコのような形になっているということを知っていれば、「元口末口」「木表木裏」「順目逆目」の関係を理解できるかと思います。
木の成り立ちを考えることは木材の理解にもつながっていくんですね。
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