版画の魅力
版を置き
紙をのせて上から擦る
そして最後に
紙をめくる
その瞬間
生まれたばかりの作品が
目の前にある
まだ
僕以外の誰も
見たことのないそれ
僕だけの目の前にある
それら
2022.6.1
版画というのは
版の傷跡
その写し
僕が最初の鑑賞者
版画の場合に
いっそう強く
そう思う
自分の意図を超えて
そこに生まれる複雑さ
一つの版から生れるそれは
すべて同じ形、同じ大きさ
それらは
おなじもの?ちがうもの?
同じものを
大きくして見たり
小さくして見たり
それって
同じものを見ていると
言える?
この中に
あなたは何を
見出す?
これらの作品について、実をいうと僕の作品という感じがあまりしません。
仕上がりは絵の具に対する水の量や紙の質、紙を擦る強さ、版と紙を圧着させておく時間といったいくつもの条件によって変化し、それは常に予測できない結果をもたらしました。僕自身は作者というよりも最初の鑑賞者のような気分でわくわくしながら版木に張り付いた作品をめくっていきました。
実際、いくつかの作品には僕の意図によっては生み出されえないような複雑な細部が備わっているように感じます。
偶然が作り出した様々な痕跡、そのように呼ぶのがふさわしいような作品をまとめた1冊、ということでタイトルは「偶然の痕跡」としてみました。
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A4版、34ページ
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