JUNOTA短歌まとめ-2023

短歌

01.水滴が麦茶のコップの輪を作るひとり私は夏思い出す
02.稲刈りの翌朝に見るはざ掛けに私はひとり胸なでおろす
03.絵筆置き僕は大きく伸びをする窓のむこうで葉っぱが揺れる
04.夜明け前起こされ僕は餌を出す猫は大きな鳴声ひとつ
05.寝る前にジュール・ヴェルヌの本を読むアドリア海に浮かぶ夢見る
06.君を待つ車の中で眺めるはむこうの山に沈む夕焼け
07.朝食にしゃけの切り身を焼いている窓辺の猫がこちらを見てる
08.生ぬるい氷枕に額をあてる今朝の光はやけにまぶしい
09.朝一番郵便局で手紙出すフロントガラスに葉っぱが一枚
10.点火式夏の間の埃が燃える今年の冬は寒くなりそう
11.約束の時間に少し早いので大きな枕を買ってから行く
12.茶房にはタバコの煙浮かんでる壁の汚れがこちらを見てる
13.通過する重い貨物車午前二時地響き聞いて僕は目覚める
14.車乗り今日も短歌を習いに行ったまとめて読むと結構楽しい
15.夜勤明け海辺の道を歩いて帰る倉庫の壁に染み付いた影
16.描きに描きしまいに白く塗り潰す進むというのか戻るというのか
17.食べかけのサンドイッチを皿に置き粉コーヒーを淹れに立つ朝
18.柿の実の皮を剥きつつ君は言うほんとはあまり好きじゃないけど
19.朝起きてとある施設の閉館を知る昔の記憶の色よみがえる
20.冬の夜読んで聞かせるこの本を眠れないのと君が言うので
21.いつの日かそんな日なんて来ないかも知れないけれどこれは大事にしまっておくよ
22.まだ早い石油ストーブ火をつけてお芋をひとつその上に置く
23.早朝の窓の向こうの霧の先林の奥に何かの気配
24.熟れ過ぎてコンクリートに落下した柿の実避けて人々は行く
25.秋風で青緑色の水面に色の無い葉が静かに沈む
26.放課後の穴ボコだらけのくだり坂道の半ばでくちびるを噛む
27.白い朝窓下の道を見下ろせば黒い足跡平行線で
28.雪の街色とりどりの照明が点いては消えて朝をむかえる
29.子どもらのお化けのような笑い声壁をすり抜けここまで届く
30.焼き上がり甘い香りを漂わすシナモンロールはまるで滑り台
31.こぼれくる涙を目じりに溜めながら最後のセリフにNGを出す
32.こぼれくる水の冷たさ指先にかじかんだ手で水門ひらく

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