
さて、ここまでは割と簡易的な製本の方法を紹介してきました。ここから先は少し手間のかかる、ハードカバーの本の作り方を解説していきます。このレッスンでは先ほど紹介した「かんたん糸綴じ本」をハードカバー化する方法をご紹介します。ホッチキス本でも同様のやり方でハードカバー化できるので、ぜひ、お試しください。
最初に一般的なハードカバーの本がどのような構造で出来ているのかを大雑把に解説してみます。ハードカバーの本は基本的に次の図のように外側と内側という2つが組み合わされてできています。

外側は内側の本文の束よりも一回り大きくなっていて、図のような段差があります。この段差の部分をチリといいます。それぞれ3mmずつです。

そして、内側と外側をつないでいるのが、「見返し」と呼ばれる紙です。見返しの半分は表紙(裏表紙)の裏側に貼り付けられていて、もう半分は本文用紙の最初のページ(最後のページ)に貼り付けられ、本文の束と一緒に綴じられています。表紙の裏側に貼り付けられている方の紙を「きき紙」といい、そうでない方を「遊び紙」といいます。
ついでに紹介しておくと、遊びの次のページにもさらに1枚、別の種類の紙が入っている場合が多いです。この紙を「とびら」と呼びます。書店に並んでいる本を見てみると、どの本も様々な紙を様々な方法で組み合わせて、読書のはじまりを演出していることが分かります。作り手のこだわりや、どんな本にしたかったのかが顕著に出る部分です。
このレッスンではlesson4で作った「かんたん糸とじ本」をそのままハードカバー化してみます。lesson4では「見返し」にあたる紙を1枚しか入れていません(表紙と裏表紙にあたる紙)。なので、今回は見返しのうちの「きき紙」だけで、「遊び紙」にあたるものが存在しません。もし、遊び紙を入れたい場合には、「かんたん糸綴じ本」を作る際に、表紙の紙を2枚入れてください。
事前の説明はこれくらいにして、さっそく作り方の解説をしていきたいと思います。今回は少し工程が多いので、「部材の寸法を決める」「外側を作る」「内側をつくる」「合体させる」という4ステップに分けて解説していきます。
少しおまけのテクニックとして、本の表紙に一部分へこんだ場所を作っておいて、そこに表紙の絵を入れる方法を解説していきます。

仕上サイズ : 135×135×8mm
ページ数 : 40ページ
【材料と道具】
◆本文用紙 :モンテルキア81.5 kg , 135×135mm×9枚
◆見返し :NTラシャ<100> , 135×135mm×1枚
◆表紙:NTラシャ<100> , 181×332mm×1枚
◆表紙窓に入れる絵:68×68mm×1枚
◆板紙(表紙・裏表紙):チップボール紙、1mm厚、141×133mm×4枚
◆板紙(背)チップボール紙、1mm厚、141×8mm×2枚
◆刺繍糸 :本文の天地長さの3から4倍くらい
◆カッターナイフ、カッターマット
◆とじ針
◆錐(キリ)
◆生ボンド
◆糊ボンド
◆平筆
◆竹串2本
◆乾燥用の重し
◆クッキングシート
【面付け】
lesson2で紹介した中綴じ製本のやり方で面付けします。
【外側の構造】
これから各部材の寸法を決定していきますが、その前に外側のパーツがどんな部材の組み合わせで出来ているのかを解説します。外側のパーツは下の図のような構造になっています。イメージしやすいように組み立てる順番に沿ってどんな部材があるのかを紹介していきます。
まずは、表紙用の紙を机の上に広げます。そこに、3つのボール紙を貼り付けます。これは板紙と呼ばれるパーツで、表紙の芯となるものです。大きい2つが表紙と裏表紙の板紙、真ん中の細い板紙が背表紙の板紙です。板紙を表紙用の紙でくるむことで外側のパーツは出来上がっています。
これで、どんな部材が必要か分かったので、次のページでそれぞれの部材の寸法の決め方を解説していきます。


ではそれぞれのパーツの寸法の出し方をご紹介します。各部の寸法は、本文用紙の束の寸法を基準にして決定していきます。今回はlesson4で作った本を本文に見立てて考えていきますので、135×135mmです。本文束の厚さも計算上必要な数値です。測ってみると4mmでした。
次に板紙の寸法を、以下の計算式を使って計算します。
◆板紙(表紙・裏表紙)
天地=本文の天地135mm+上部チリ3mm+下部チリ3mm=141mm
幅 =本文の幅135-溝9mm+背板紙の厚み2mm+チリ3mm+あそび2mm
=133mm
◆板紙(背)
天地=本文の天地135mm+上部チリ3mm+下部チリ3mm=141mm
幅 =本文の厚さ4mm+表表紙板紙の厚さ2mm+裏表紙板紙の厚さ2mm
=8mm
板紙のサイズが計算出来たら、次に表紙の寸法を計算します。表紙の寸法は、次のような図を書いてみると分かりやすいです。完成形をイメージして、窓の位置も書いておきましょう。

上の図のように表紙に板紙を置いた図を描きます。板紙同士のあいだは、それぞれ9mmずつ隙間をあけておきます。ここが、ハードカバーの本にある溝の部分になります。
板紙のアウトラインから外へ20~30mm程度外へ広げた位置が表紙のサイズとなります。この20~30mmというは、板紙を包むための折り返し幅です。20~30ミリ程度のあいだで、材料の寸法と相談しながら決めるとよいでしょう。
計算式として書くなら
◆表紙
天地=折り返し幅20mm+板紙天地141mm+折り返し幅20m=181mm
幅=折り返し幅+表紙板紙の幅+溝9mm+背板紙の幅+溝9mm+裏表
紙板紙の幅+折り返し幅
=20+133+9+8+9+133+20=332mm
となります。計算で出しても良いですが、完成形のイメージをするために図を描いてみることをおすすめします。
そして、表紙窓の寸法や位置もこのタイミングで図に書き入れておきます。
以上でハードカバー本を作るための準備が整いました。
さっそく手を動かして製本スタートです。
【外側の作り方】
①寸法通りにパーツを切り出す。表紙用の板紙一枚に窓を開けておきます。
②板紙を糊ボンド(木工用ボンド+フエキ糊)で貼り合わせ、重しを乗せて乾燥させます。
③表紙の紙に板紙の貼り付け位置を下書きします。
④表紙の四つ角を図のようにカットします。
⑤クッシングシートを2枚重ねに敷きます。その上に表紙を乗せ、糊ボンド(木工用ボンド+フエキ糊)を薄く塗り広げます。
⑥寸法線に合わせて板紙を置きます(窓板紙は、凹みを下向きにして置く。この時、左右上下を間違えないように注意!)。
⑦ボンドで汚れたクッキングシートを取り除いた後、長辺側から板紙を包みます。この時、クッキングシートの端を持って、シートごと折るときれいに包めます。
⑧折りこんだ長辺の両端(4か所)を図のように爪で折りこみます。
⑨短辺側も同様にクッキングシートごと折りこむ。
⑩表紙側を表に向け、クッキングシートを重ね、その上から優しく擦りつけ、しっかりと密着させます。窓の部分は四つ角に小さくカッターナイフで切り込みを入れると上手に密着できます。
⑪重しを乗せて乾燥させます。
これで外側ができました。
乾燥させている間に内側を作りましょう。
今回は、lesson4で作った「かんたん糸綴じ本」をそのまま流用しますので、改めて解説はしませんp.33~を参照してください。
【内側と外側を合体させる】
①溝にクセをつけます。溝の部分に親指の側面を押し付けてへこませます。

②裏返して机に置き、溝(斜線部分)に生ボンドを塗ります。

③中身の位置を決める。外側三方向に3ミリの余白ができる位置が中身の位置です。余白が均等になるように中身を置きましょう。

④本文束を一枚めくった所にクッキングシートを2枚挟み、きき紙に糊ボンドを薄く塗り広げます。ノドの中央を起点として扇状に一方通行で筆を動かすときれいに塗れます。

⑤汚れているクッキングシート取り除いてから、表紙をぱたんと閉じる。

⑥上から軽く押し付けたあと、表紙を開き、位置が正しいか確認します。ずれてしまった時には、手早く修正します。慣れると上手にできるようになります。位置が正しければ、クッキングシート越しに撫でつけて、しっかり密着させます。

⑦本をひっくり返して、反対側も同様に貼り付けます。

⑧クッキングシートを挟んだまま、溝の部分に竹串を入れます。その状態で重しを乗せて、一晩乾燥させます。翌日、窓の中に絵を貼り付けたら完成です。ホチキス本でも同様のやり方でハードカバー化できるので試してみてください。

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[ ZINE作家によるZINE作家のための製本術・目次]◆はじめに
◆lesson5:「かんたん糸とじ本」をハードカバーにしてみよう
◆おわりに
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