70.できたてのような空気を吸い込んで今年最初の一枚を描く
71.冬の日にデスクライトの電球で日光浴する曇天の猫
72.冬の朝クラムチャウダー湯気立てる今日もみんなは会社へ向かう
73.煙突は空に先端つき立てて今日も濃い雲製造してる
74.深夜バス午前零時に恵那を出る疲れた寝息いっぱいに乗せ
75.バス降りて新宿駅の午前五時なま暖かい風吹き過ぎる
76.早朝の人のない街がらがらとスーツケースは音たて滑る
77.開店と同時に入った喫茶店大きなコーヒー飲みながら寝る
78.目の前に苺のショート浮かんでるいつかどこかで食べた気がする
79.水中の動物園で待っているとても小さいプレリードッグ
80.帰り道探検隊は土を踏むスークリームをたくさん持って
81.あの時を忘れてしまった月の夜砂漠の真ん中ブランコを漕ぐ
82.熱帯の鳴りやまぬ雨おもい出し耳を澄ませてペンを手に取る
83.ペンギンが手を差し伸べる冬の朝メキシコ・シティの朝日は昇る
84.火星から言葉の種を取り寄せて寝ぼけ眼で机に向かう
85.窓際でアイスを食べる夏の夜 蛍光灯に集う虫たち(同1)
86.虫たちの死んだ季節に手に取った湿気た花火は燻っている(同1)
87.青白い蛍光灯の光浴び魔法は解ける夢の世界の
88.窓の外田んぼの水が揺れている今朝はすこーし良い夢を見た(同1)
89.どこにある?どこにもないよ?透明なテープを探し人々惑う
90.まっさらなスケッチブック携えて景色見ながら下車駅探す
91.繰り返し沸いては冷めるケトルの湯 沸くまで何かしようと思うと
92.幼少の記憶と共に縄を飛ぶ白く凍った路面の上で
短歌まとめ2025

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