はじめに
今回の記事では、角背上製本(ハードカバー本)の寸法計算方法について解説します。
自分で本の寸法を決められるようになりたい方や、
「角背上製本 寸法計算ツールでは、どのように寸法を計算しているの?」
という方に向けた記事です。
角背上製本では、本文のサイズを決めるだけではなく、本文の厚みや板紙の厚さなどから、表紙・裏表紙・背に使う板紙や、表紙材全体の寸法を決める必要があります。
一度考え方を理解しておくと、本のサイズや厚さが変わっても自分で寸法を出せるようになります。
なお、この記事で紹介する数値は、僕が角背上製本を作る際に使用している寸法をもとにした一例です。
使用する材料や製本方法によって、チリや溝、折り返し幅などは調整してください。
角背上製本とは
まず、角背上製本とは何か、ということについて軽く触れておきたいと思います。
角背上製本とは、本の背の部分が平らになっている上製本(ハードカバー)の本です。
本文よりもひと回り大きな板紙で表紙を作り、本文と表紙を組み合わせて一冊の本にします。
参考画像(だいぶボロボロの本ですみません….)
▼

背の部分が平らになっているのが特徴です。
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寸法計算の前に知っておきたい「チリ・溝・折り返し・あそび」
この記事では、いくつか製本特有の言葉を使います。
チリ
お手持ちのハードカバーの本をご覧ください。
表紙の紙が本文よりも少し外側にはみ出ていますね。
このはみ出ている分のことを「チリ」と呼びます。
この記事では、天地および小口側のチリを3mmとして計算します。

溝
表紙・裏表紙の板紙と背板紙との間に設ける隙間です。
本を開閉するために必要な部分で、この記事では9mmとしています。

折り返し幅
角背上製本の表紙は、下の図のように板紙を表紙の紙でくるんで作ります。
この時の折り返し幅も重要な寸法です。

あそび
本文と表紙を組み合わせる際の余裕として設ける寸法です。素材に合わせて1~2ミリで調整します。
この記事では2mmを加えています。
角背上製本の構造を知りたい方にはこちらの記事もおすすめです
▶「かんたん糸とじ本」を ハードカバーにしてみよう!
角背上製本で最初に決める5つの寸法
まず、次の5つの寸法を決定します。
- 本文の天地寸法
- 本文の幅寸法
- 本文束の厚さ
- 板紙の厚さ
- 表紙材の折り返し幅
この5つが、以降の計算のもとになる数値です。
本文の天地寸法
本を縦に置いたときの、本文の上下方向の長さです。

本文の幅寸法
本文1ページ分の横方向の長さです。

本文束の厚さ
完成した本文を重ねたときの厚みです。
本文束の厚さは、紙の厚さを元にを計算だけで求めるよりも、実際に紙を折り、本文を束にした後で計測するのがおすすめです。

板紙の厚さ
表紙・裏表紙・背に使用する板紙の厚さです。

表紙材の折り返し幅
表紙に使う紙や布を、板紙の裏側へ折り返すための幅です。

計算で求める3つの寸法
先ほどの5つの寸法を与条件として、次の寸法を計算します。
- 表紙・裏表紙に使う板紙の天地と幅
- 背に使う板紙の天地と幅
- 表紙材全体の天地と幅
計算結果は次のようになります。(計算方法は後ほど紹介します)
角背上製本の各パーツの計算式
板紙(表紙・裏表紙)
まず、表紙と裏表紙に使う板紙です。
◆天地
本文の天地にそれぞれ3mmずつチリを作るので、本文の天地 + 上部チリ3mm + 下部チリ3mmとなります。
◆幅
以下のような計算式で求めます
本文の幅 − 溝9mm + 板紙の厚さ + チリ3mm + あそび2mm
で計算します。
板紙(背)
次に背に使用する板紙です。
◆天地
表紙・裏表紙の板紙と同じです。
本文の天地にそれぞれ3mmずつチリを作るので、本文の天地 + 上部チリ3mm + 下部チリ3mmとなります。
◆幅
背板紙の幅は
本文束の厚さ + 表紙板紙の厚さ + 裏表紙板紙の厚さです。
表紙材の寸法
最後に、板紙を包む表紙材の寸法を計算します。
◆天地
表紙紙天地=折り返し幅 + 板紙天地 + 折り返し幅となります。
◆幅
表紙紙幅 =
折り返し幅
+ 裏表紙板紙幅
+ 9mm
+ 背板紙幅
+ 9mm
+ 表紙板紙幅
+ 折り返し幅
となります。
整理すると、
表紙材幅 =(表紙板紙幅 × 2)+ 18mm + 背板紙幅 +(折り返し幅 × 2)
です。
実際に計算してみる
具体的な数値を使って、一冊分の寸法を計算してみます。
今回は、
- 本文天地:210mm
- 本文幅:210mm
- 本文束厚:27mm
- 板紙厚:2mm
- 折り返し幅:30mm
とします。
これは僕の「暮らしの実景」という本の実際の寸法です
板紙(表紙・裏表紙)
まず、表紙と裏表紙に使う板紙です。
◆天地
本文の天地にそれぞれ3mmずつチリを作るので、本文の天地 + 上部チリ3mm + 下部チリ3mmとなります。
今回は本文の天地が210mmなので、210+3+3=216mmとなります。
◆幅
幅の計算式はこうでした。
本文の幅 − 溝9mm + 板紙の厚さ + チリ3mm + あそび2mm
今回は本文の幅が210mmなので、210-9+2+3+2=208㎜となります
板紙(背)
次に背に使用する板紙です。
◆天地
計算式はこうでした。
本文の天地 + 上部チリ3mm + 下部チリ3mmとなります。
今回、本文の天地は210mmなので、210+3+3=216mm
となります
◆幅
背板紙の幅は
本文束の厚さ + 表紙板紙の厚さ + 裏表紙板紙の厚さです。
今回は、本文束の厚さが27mm、板紙の厚さが2mmなので、
27+2+2=31mmとなります。
表紙材の寸法
最後に、板紙を包む表紙材の寸法を計算します。
◆天地
計算式は以下の通りです。
表紙紙天地=折り返し幅 + 板紙天地 + 折り返し幅
今回は折り返し幅30mm、板紙天地216mmなので、
30+216+30=276㎜となります。
◆幅
幅の計算式は以下の通りです。
表紙材幅 =(表紙板紙幅 × 2)+ 18mm + 背板紙幅 +(折り返し幅 × 2)
今回は、表紙板紙の幅208mm、背板紙の幅31mm、折り返し幅30mmなので、
(208×2)+18+31+60=525mmとなります
寸法は材料や製本方法に合わせて調整する
ここまで紹介した計算式では、
- チリ:3mm
- 溝:9mm
- あそび:2mm
として計算しています。
ただし、これはすべての角背上製本に共通する唯一の寸法ではありません。
例えば、
- 使用する紙の厚さ
- 表紙材が紙か布か
- 板紙の厚さ
- 本文の厚さ
- 開きやすさ
- 作りたい本の見た目
などによって、ちょうどよい寸法は変わります。
まずはこの記事の寸法を基準として一冊作り、必要に応じて少しずつ調整していくのがおすすめです。
角背上製本 寸法計算ツールのご紹介
以上、角背上製本でハードカバーの本を作るときの寸法計算方法を紹介しました。
考え方を理解してしまえば自分でも計算できますが、
「本を作るたびに毎回計算するのは、やっぱり面倒だな……」
という方もいると思います。
そこで、今回紹介した計算を自動で行う
「角背上製本 寸法計算ツール」
を作りました。
必要な5つの数値を入力すると、
- 表紙・裏表紙板紙
- 背板紙
- 表紙材
の寸法を自動で計算します。
寸法図の表示やPDFでの保存もできます。
試しに今回計算した内容をこのツールに計算させてみます。

必要な項目を入力して、「計算するボタン」を押します・・・

計算結果がでました。
先ほど、手計算したのと同じ内容になっているはずです。
そして、自動的に参考図も作ってくれます

計算方法を知っておくことは、製本の仕組みを理解することにつながるので大切ですが、計算はやっぱり面倒なので、良かったら、みなさんもこのツールを使ってみて下さい!
角背上製本 寸法計算ツール
▶ ツールを使ってみる
実際の製本方法はこちら
今回の記事では「寸法をどう決めるか」に絞って紹介しました。
実際に板紙を切ったり、表紙材を貼ったり、本文と表紙を組み合わせたりする方法については、別の記事で紹介しています。
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このブログでは、僕が日々ものづくりに取り組む中で得た知見を共有しています。
また、自分が制作していく中で「あったらいいな」と思ったツールの開発や、オリジナルの漫画・アニメーションなどの制作にも取り組んでいます。
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