【日記】暮らしの実景 – 2024.05.03

 今日は朝から庭文庫に行って午前中いっぱい草刈りをした。朝、行くと、車が一台、庭文庫の前に停まっていて、宿泊のお客さんはいないと聞いていたけれど、誰かいそうだぞ、思ってウロウロしていたら、二階の窓から展示作業中のAさんが顔を出した。草刈りを頼まれた旨を伝えて、作業を開始。
 今の時期の草は柔らかくて刈りやすい。建物に近い方から始めて順に下っていった。しばらくしてmさんがやってきて、蔵の周りをやってほしい、と言われたので、一段落ついたときにそちらへ移動する。このあたりは去年の秋に頼まれたときには刈りそびれていたエリアなので、草の背丈が高くなっているし、草自体が乾いて固くなっているので刈りづらかった。手こずったけれど、少しずつ進め、なんとか刈った。十二時になる頃には、腕がぷるぷるしていた。
 帰宅し、焼きそばを作って食べた。食後、「暮らしの実景」用の紙を切り出した。Mはよく眠っている。疲れているのだろう。田んぼへ行く。
 一枚目の田んぼはうまく水が溜まっているみたいだったけれど、二枚目の下の田んぼへはうまく水が流れていなかった。耕運機を持ってきて、もう一度上の田んぼをかき混ぜた。これで、更に少し水持ちが良くなって、下の田んぼに水が行くようになるはずだ。その後、庭文庫へ行った。
 駐車場には車がたくさん停まっていた。隙間になんとか駐車して坂を上がっていく。午前中に草を刈った分のバイト代をもらうつもりだったけれど、mさんは忙しそうにしていた。しばらくジョン・ファンテの「塵に訊け」を読んで過ごす。奥の廊下の窓辺に置かれた机に向かう。とても居心地が良い。後ろで音がして、ふと顔を上げると少年がいた。廊下を奥へと進み、洋室をのぞき込む。「眠る部屋だね」と彼は言った。
 そして、「ぼくが寝るのは上だよ。」と続けた。
「二階なの?」と僕が聞くと、少年は首を振った。
「二段ベッドの上?」ともう一度聞いてみると、「そうだよ。」と答えた。
 そして、なんか付いてる、と言いながら、ガラス窓の汚れを指さした。
 ジョン・ファンテの「塵に訊け」は僕の好きなタイプの文章という気がする。文章を書いているときの熱気を感じる。ものすごく、速いスピードで一気に書かれた文章という気がする。ほしいなぁ、と思いながら、ちょっと高いので我慢した。そのうちに手に入れてじっくり読みたい本だ。彼の他の本も気になる。
 なにか、代わりに、手頃な本はないかなと本棚をウロウロする。次に手に取ったのは百円の棚にあったレイモンド・チャンドラーの「湖中の女」という小説だ。最初の方を読み始めてみる。何となく片岡義男の文章を思い出させた。固有名詞の具体的な感じ?というのだろうか、なんとなく、こだわりが強くて、なんとなく、ガジェット好きそうという勝手なイメージを持った。さっきのジョン・ファンテと比較すると、レイモンド・チャンドラーの文章は対象から距離を取って、冷静に、淡々と書き進めているように思う。僕の好みは断然ジョン・ファンテだ。レイモンド・チャンドラーを棚に戻し、他の本を探す。次に見つけたのは松本清張の「砂の器」だ。これは上下セットで三百円だった。ちょうど先週、詩と美術館に行った時に、話に出た本で、ぜひ読んでみて、と言っていたので、試しに読み始めてみることにした。それを手に取り、例の窓辺の机に座って読んだ。しばらく読んで、バイト代をもらい、「砂の器」を買って帰った。Tさんから電話が入っていたので折り返す。また「暮らしの実景」の注文があったそうだ。ありがたい。印刷を進めなくては。
 夜はキャベツと大根がたくさん入ったスープを作った。今日は少し肌寒い。今日はこのあと、少し油絵を描いてから寝ることにしようと思う。
 この頃描いているのは五〇号の油絵で、完成させて熊谷守一大賞に出したいと思っているものだ。二枚同時に描き進めていて、どちらも空想の風景の中に二人の人物を配置している。人物は男性のようにも女性のようにも、微笑んでいるようにも、悲しんでいるようにも見える絵にしたいと思って色々試しているけれど、なかなかうまくいかない。苦戦している。
 今回の下地はとても良い感じである。アクリルで大まかな構図を描いた上に、パミスモデペで下地を作った。ざらざらしていて、絵具の伸びは悪いけれど、じっくり絵を作りこみたいときにはこういう下地がいいなと思う。このごろは割と短期間で絵を仕上げることが多かったので、この二枚は締め切りギリギリまで、粘って描いてみたいと思う。けれど、今のところ、絵はめちゃくちゃだ。人物の配置も当初考えていたのと全然変わってしまった。どう進んでいくかわからない。けれど、自分自身、変わっていく絵を楽しみに見ている。
 このところ、夜にその絵を描いていて寝不足だ。けど、少しでも描いてから寝ようと思う。

2024.05.03

この日記は小雑誌「gota a gota」の第1号に掲載されたものです。
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